| 1月 8日(金) | 乾坤一擲
今年の干支は寅。トラには「寅」と「虎」の二文字ある。「虎」というと動物園の檻のなかでゴロリとしている、のんびりした猛獣を想像する。トラ年のトラはやっぱり「寅」がふさわしい。この干支は十干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)と十二支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)とを組み合わせたもので、中国の商(殷)の時代、紀元前17世紀頃、に出来た。今年の寅年は、正式には庚寅(かのえとら)である。今年生まれた人は、庚寅年生まれで、数学的には、10と12の最小公倍数の60で一回りする。その起算点となった年の干支に再び戻ることが「還暦」である。数え年、61歳の人が今年の「還暦」のお祝いの対象となる。今はこの数え年は使わない。昭和30年から誕生日がきて加算されるという満年齢となった。「還暦」と「満60歳の誕生日」とは無関係なのだが、今では還暦祝いは60歳の誕生日の周辺で行われている。この十二支の中で、寅は日本に生息していない。16世紀後半の秀吉の朝鮮出兵で、加藤清正が虎退治をしたという伝説があり、そのことで虎という動物の存在が日本人に知られる。日本にいないというと、もうひとつ竜である。これは中国の伝説上の動物で地球上には実在しない。干支の中で唯一奇妙な動物である。普段は水中に潜み、奇矯な鳴き声で雷雲や嵐を呼び、昇天する。力が伯仲した二人の強豪が相対する「見応えのある試合」のことを、「竜虎相摶つ」という。庚寅の年に、その虎のライバルである「竜」が登場する。NHK大河ドラマ、坂本竜馬物語、「竜馬伝」である。幕末に出現し、あっというまにこの世を去った土佐のこの脱藩藩士を、いきなりこの世に引き戻したのは、司馬遼太郎である。「竜馬がゆく」、1962年(昭和37年)6月、産経新聞の夕刊に連載が開始された。坂本竜馬という人物は一部では知られていたが、全国区ではない。司馬遼太郎の「竜馬がゆく」、話の進め方は独特だった。だれもがぐいぐい引き込まれていった。空間や時間が突然あっちいったりこっちいったりする。そういう筆法だと、不思議と歴史と人物のかかわりがわかり易いのだ。「竜馬」、大ブレークである。「竜馬」の名前の由来は、生まれたとき背中に黒毛が生えていたからとされている。身長180cmの大男。近眼で北辰一刀流の免許皆伝。刀より戦いやすい小刀がいいと、小太刀を差していたが、あるとき、これからは拳銃だといって西洋式の「ピストル」をみせびらかす。これに感心していた友人に、次に会ったときは、「万国法」を見せ、揉め事は「力」でなく法律じゃ、とうそぶいたという面白い逸話が残っている。仲がよくなかった薩摩と長州を結びつけて薩長連合を成立させ、大政奉還への道筋をつけた。司馬遼太郎の「竜馬がゆく」は、「脱藩の田舎侍」が、のびのびと、江戸での青春を謳歌し、その志の半ば、31歳の誕生日に暗殺されて、終わる、青年・坂本竜馬の、短いが濃い、人間ドラマである。その「竜の申し子」・坂本竜馬が再び庚寅の今年クローズアップされる。時代は変わるが、同じように先は見えない。これからの日本の若者の突き進む道、この坂本竜馬の気概は大いに参考になるはずである。 |
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